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むささび通信

蜷川幸雄

先日観た番組。
蜷川幸雄の無名の若者をオーディションで集めて
演劇集団を旗揚げし、その公演までを追った密着ドキュメント。

演目が1962年初演の「真田風雲録」。
真田幸村と死を覚悟しながらもついていく若者達の
話ということもあり、テーマからして熱い。
おそらく初演の頃とは時代も空気も違うし、若者達も現代っ子。
それなりに演劇に対する愛情と情熱もあるんだろうけど、
蜷川幸雄にはまったく届かない。
灰皿どころか、椅子はなげるわ、罵倒するわ、すさまじい。
私だったらお金もらってもやらないけど、彼らはまじめなのだ。
稽古が終わって飲み屋にいっても芝居の議論からいつのまにか
立ち稽古までなってしまう。
それでもたしかに稽古場での風景を観ても、セリフが空虚な感じが
するのはいなめない。
役者の中には母子家庭でアルバイトをかけもちしているような苦労人もいるけど、
現代の日本では浮浪児はおろか、命をかけてまで戦に挑むようなことはありえない。
そのリアルなものとうわっつらの演技の隙間はなかなか埋まらない。
蜷川幸雄はなんとか俳優の内面から出てくる言葉と
ひりひりするほどの感覚を引き出そうと悪戦苦闘し、
しまいには泥の入ったバケツを頭からかぶせ、どろどろの中で芝居をさせる。
理屈でわからなければ体感でということなんだろう。

たしかに苦しんで考え抜いて汗と泥にまみれていくうちに
彼らの表情は精悍な顔つきになっている気はした。

最終的に芝居の結果はどうだったかわからないけど、
彼は芝居というより「生きていく」という「人間の根源的なこと」を
ことを教えたかったのかなぁと思った。
あきらかにみんなの顔と言葉に「蜷川さんからそれを教わりました」的なものが
にじみ出ているんだもの。

でもなぁ、あの若者の熱さとエネルギーの演技はどうにも苦手。
なんかはずかしくて穴に入りたくなっちゃう。
やっぱり、蜷川幸雄の芝居だったら
感情移入だけではない鍛錬を重ねた俳優の演目を観たい。
(蜷川幸雄のやってることが無意味って言ってるわけじゃない)
ただ、74才の満身創痍の身体でこういうことをやろうっていう
意気込みだけはスゴイと思うし、こういう熱いオヤジは(鬱陶しいけど)
もう出ないだろうなあ。
by musasabi-sapana | 2009-12-27 19:10 | その他もろもろ
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