むささび通信

梨木香歩/家守綺譚

都内最高齢と言われていた111才のおじいさんが30年以上前に亡くなっていた
というニュースは最初いろいろ想像をかきたててくれた。
この30数年、家族は本当に一度もおじいさんの部屋を覗かなかったのか?
けっして広いとはいえない間取り(1階がたぶん2DKくらい)で
あるときまで家族5人+遺体とどう暮らしていたのかなどなど。
このまま見つからなかったら都内どころかすぐに日本一、
ずっと記録更新しつづけることになっていたのだ。

「即身成仏したい」と言っていたおじいさんとはうらはらに
家族間では年金の不正受給など、どうやら現実味をおびた
なまぐさい話のようなので少々がっかり(?)。
即身仏になったおじいさんとひそかに交信をかわしていたとかだったら
おもしろかったのに。

図書館でたまたま見つけて読んだ梨木香歩の「家守綺譚」が
非常におもしろかった。
100年ほど前の日本、舞台は限定できないけど京都あたりか。
ボートの事故で失踪した親友の家を守ることになった売れない文筆業が主人公。
部屋にかかる掛け軸の絵から夜な夜な親友が現れたりする。
日本家屋には庭があり、四季おりおり植物が咲き乱れる。
その庭木のひとつサルスベリに惚れられて、親友に
「ひとつおもしろい話を聞かせてやってくれ」
と言われそうすると身悶えして喜ぶサルスベリ。
元は迷い犬のゴローとカッパの交流、
謎の物体を拾った主人公に「ああ、それはカッパです」とひょうひょうと
教えてくれる不思議な隣の奥さん、
タツノオトシゴの出産、庭の池に一瞬住み着く鯉の人魚、小鬼、
何度もだます狸など
かなり荒唐無稽な内容でも
文章の美しさと表現力でするすると読ませる。
またひと昔前の日本というところがミソ。
夜は闇が多く、うっそうとした庭、木造、隙間だらけの家はあの世や
異界からも生き物がもぞもぞと来そうだもの。

とても映像的なんだけど(頭の中にむくむくその情景がうかぶ)いざ映像にすると
気色の悪い物になってしまうんだろうな。
これぞ小説ならではといった作品。
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by musasabi-sapana | 2010-07-31 12:24 | 映画・本・美術 | Comments(0)
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