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むささび通信

工場閉鎖の街

NHKでやってる「ドキュメント72時間」。
3日間、同じ場所に密着取材するという番組で
飛行場、歌舞伎町の24時間営業の花屋さん、
大阪梅田駅構内の立ち飲み串かつ屋さんなど、
普通の人々の人間模様が面白いのでけっこう見る。

が、昨日の「工場閉鎖の街で」は題名からしてだけど、
あまりに暗かった・・・・。
岐阜県美濃加茂市にある創業33年の
ソニーの工場が3月末で撤退した時の最後の3日間を追ったもの。
最盛期は4〜5000人の人が働いていたのに
閉鎖に伴って2000人ほどの人が職を失うらしい。

夕方、工場の入口からは仕事を追えた従業員達が
続々と出てくる。
これまで放送していたテーマとはちがって
カメラの先にある人々の口は重い。
それどころかほとんど目を背けんばかりに去って行く。
たまにインタビューに応じてくれる人も
次の仕事は決まっていない人がほとんど。

身につまされたのは、工場入口でカメラを向けていた、
数ヶ月前この工場をリストラされたという女性の話。
若い頃から派遣を点々とし、ようやく数年前にこの工場で
職を得たもののその安定が崩れてしまった。
この後どうするのか?との問いに
「日本を離れます。
タイのバンコクに行きます。帰ってくるつもりはありません。
永住覚悟です」
月収10万円に満たない給料のコールセンターで働くと言う。
半分笑ってるような泣きそうな顔が辛い。
たぶん行ったこともない(行ったことはあっても住んだことのない)
国に職を求めて行く、日本でも今後それが本当に
普通になっていくのかもしれない。

多くの出稼ぎ外国人は稼いで母国に仕送りをしたり、
いつかは帰国するつもりでいるのではないだろうか。
そこには少なくとも「祖国への思い」があるような気がする。
それが先の女性のように、
日本を捨てて(本意ではないのに)というか見切りをつけて
外国に行かざるを得ない状況というのは、悲しすぎる。

また工場では外国人も多く、
共に失職した夫婦と高校に行くこともままならない娘のブラジル人家族など
も出てくる。
せっかく外国の街にとけ込み、職も仲間も得、
念願のマイホームを買ったのに。

街自体が工場のおかげで仕事があったところ
(制服を洗うクリーニングやさんなど)も多く、
影響ははかりしれない。
たぶん飲食店なんかも。

工場閉鎖で失職するのは派遣・非正規社員だけではない。
正社員も配置転換などで別の県への
異動などをすすめられるらしい。
それでも取材に応じた数人の人達は
家族離ればなれになるよりは一緒にいることを選び、退社する。
出社最後の日、仲間での打ち上げの帰り。

「飲み会では会社の悪口は出なかった、
ただこれから頑張ろう、それだけです」

一番思い出に残る楽しかった製品作りは何かと問われ、
みんなが即答した。
「やっぱりブラウン管かなぁ。
忙しかったけど、みんなが一体になって楽しかった」
もう2度と戻ってこないだろう輝かしい日々。
それでもなんとかふんばってこらえて生きていかなきゃ、
というあきらめと決意に満ちた顔。

とても経済好調で浮かれているなんて一部報道を
うのみにはできない。
同じような状況が日本中のあちこちで起きている。
by musasabi-sapana | 2013-05-11 16:37
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