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むささび通信

冒険王・横尾忠則展/世田谷美術館

お腹がいっぱいになるほど「冒険王・横尾忠則」の頭の中を
たらふく見せてもらえた展覧会。
近年のY字路シリーズをはじめ、愛、エロス、宇宙から
地底、夢、幻想、温泉、怪人20面相などありとあらゆるテーマに
アンリ・ルソーや有名画家の作品のパロディーなど、総数何百点。
70歳を過ぎても衰えを見せないエネルギーにただ驚嘆する。
本人は現在「隠遁生活」と言っているが、言葉とは裏腹に
体内では創作のマグマが沸々煮えたぎっているのだなぁ。

しかしなんといっても圧巻は、60〜70年代の「平凡パンチ」
「アイディア」などでの雑誌を中心にしたグラフィックの仕事の数々。
当時の原稿をアイディアスケッチ、線画、色指定用紙と展示してある。
0.1ミリほどの細い線で描かれた高倉健など有名人や男女の職人技に近い
線画イラストもすごいが、それにもまして細かい色指定。
トレーシングペーパーの上から人物の肌はM(マゼンダ)30、太陽ーY10から
80%のグラデーション、イラストバックの汚れイキ・・・など
鉛筆の文字でびっしりと指定されている。
自分が担当印刷屋だったら「もう勘弁してください」と言いたくなるほど。
やっぱり横尾忠則は骨の随までグラフィックデザイナーだった!
もうグラフィックは充分やった、これ以上やることはない、とご本人も
言っているが、たしかにこれだけ緻密な仕事をしてきたからこそ
あとは気持と想像の赴くままに思い切り絵筆を動かしたい!
と思うのも無理ないかも。

それにしても小説家の原稿などもそうだけど、やっぱり手書きの生原稿、
手描きの絵はいい。
建築などの設計図面も、内容は同じでも手描きとPCを使ったものは
なにかが違うのだそうだ。
微妙な線の強弱、かすれなどに作り手の息使い、感情、気持ちがにじみ、
読み取る方もそれを自然に感じるのだろうか。
手仕事がPCとデータに変わり、こういう仕事ぶりの足跡が
どんどんなくなっていくのはちょっと哀しい。
by musasabi-sapana | 2008-06-02 16:26 | 映画・本・美術
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