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むささび通信

修行・苦行・荒行・拷問マラソン

ようやく昨日から筋肉痛が消えつつあります。
それとともに辛かったマラソンも夢の出来事のような気がします。

6月6日。
千歳マラソン当日、朝6時半起床。
前日にコンビにで買ったおにぎり、パン、オレンジジュースなどの朝食。
7時半にみんなで札幌のホテルを出発し電車で千歳へ、
9時前には千歳スポーツセンターに着く。
3万人強の参加者だった那覇マラソンに比べれば、ハーフ、10kmなど
全部入れても1万人程度、フルマラソンは5000人程度なので
ずいぶん人が少なく感じる。
さすがに北海道は涼しい。
その前から函館入りしていたけれど、八重桜がようやく終わり、
藤の花が咲き始め、新緑が青々としてきたころで東京だと
連休前の気候といった感じ。
そして心配していた雨も降らず、ちょうどいい曇り空。
みんなで写真を撮ってもらったりして待ち時間をなごやかにすごす。
修行・苦行・荒行・拷問マラソン_e0134219_233284.jpg


フルマラソンは10時10分スタート。
人数が少ないのでゼッケン番号順に並ぶこともなく、
なんとなく人の群れができ、先頭と数分遅れただけで人の波が動き始めた。
私は後方でのスタート。
今回は4時間30分切りをめざすべく、前回と同じく
マジックで手の甲に5km刻みでタイムを書いてきた。
コースは35km地点までは林道というか森の中の未舗装道路を走り、
その後およそ7kmを舗装の車道という流れ。
前日車でたまたまその最後の車道を通り、
「うわ、これは最後にかなりきつそうな道路」と思ったところ。

最初の5kmは人の流れにのってのろのろ走りが続く。
アスファルトと違って土の道はやわらかく、足あたりがいい。
緑も気持ちがいいし気温もちょうどよく気分も上々。
ただ思ったよりは人の進み具合が遅く、5kmを過ぎたころから
徐々にすり抜けながらピッチを早めることにする。
靴の中に砂や小石が入るのが難点だけど、気にしないことにして
小走りに走る。

那覇とちがって沿道に応援の人がいないのが寂しい。
その分景色を楽しもうと思うのだけど、林道はそうそう変らない。
森や林の中から途中原っぱのような開けたところに出たりするけれど、
それもそんなに劇的な変化があるわけでもなく、おのずと
走ることだけに集中してくる。
回りを走っている人たちもおしゃべりをしている人も那覇のように仮装したり
お祭りイベント好きな雰囲気ではなく、純粋に走りにきてるようす。

10km地点でのタイムは1時間2分。
苦しくもなくまずまずの感じだ。
このままのペースで20kmまでいこう。
途中いくつかのアップダウンがあったり、土道が砂がまかれた道路になったり
(思ったよりずっときれいに整地してくれていた)クヌギやナラ林(多分)が杉林
へと多少変っても林道であることに違いはなく少々飽きてくる。
鳥の鳴き声ももっとするかと思っていたらそれほど聞こえない。

そしてだいたい5kmごとの給水ポイントなどにいる自衛隊の応援団。
迷彩服を来たいかついおにいさん、おじさんたちが腕組みをしたり、
手を叩きながら応援はしてくれる。
しかし心がこもってない。
野太い声で「がんばってくださ〜い」とか
「笑顔がたりな〜い」とか言われてもさぁ。
誰一人ハイタッチする人もいない。

20km地点通過。
この時点のタイムはおよそ2時間3分。
むふふ、いい調子じゃないの。
これでもう少しで折り返し、あとは下りの道が多いときく。
折り返し23km地点で2時間18分。
残り20kmほどを2時間ちょっとで走れば4時間25分ほどでゴールだ!
まちがいないと思った。
あとは少しペースを落とそう。

この余裕は数十分後になくなった。

25km地点をすぎた頃、なんとなく胃のあたりに違和感を感じる。
普段練習では10kmくらいだと水も飲まないのに
今日はけっこうまめに給水とったからかなあ、
それも水かと思ったらアミノ酸飲料だったし。
お腹がすいてエネルギー切れたら困ると思って
走るちょっと前に大会受付でもらったソイジョイを食べたり、
20kmくらいでウィダインゼリーを飲んだりもしたし。

胃の違和感はだんだん不快感になりはじめる。
それでもなんとか走り、30km地点でのタイムは3時間9分。
その後は転がり落ちるようにどんどん体調が悪くなった。
走るたびに胃が上下し、その振動で気分が悪くなり、止まってしまう。
はいていたワコールのスパッツのしめつけがさらにその苦しさに拍車をかける。
こぶしをお腹とスパッツの間につっこみ、少しでも隙間があくようにとか
伸びるようにしたり、深呼吸したり。
それでもいっこうによくならない。
いっそはさみがあれば切ってしまいたい、とも思った。
貧血気味になってだんだん目の前がかすみそうになるし、
耳はボワ〜ンという音が聞こえてくる。

走るどころか歩いては立ち止まり、身体をくの字に曲げ、
川の欄干にもたれかかり呆然とする。
完全に4時間半切りは無理と思ってからは
「リタイアするか完走するか」
「でもリタイアしたいって思っても沿道に人はいないじゃん」
「ああ、でもせっかく30kmまで走ったのにリタイアはないよな」
「このまま気を失ったらどうなるんだろう」
なんてことばかりが頭の中をぐるぐる回る。
たしかにそこにいるのに、
すばらしい緑ときれいなせせらぎ、沼が別世界のように感じる。

35km過ぎの舗装の車道になると走ることは完全に無理になり
ひたすら歩きと休むを繰り返す。
ずっと先が見通せる果てしなく続くように見える道路。
そして日陰もなく照りつける日差し。
ゾンビの私が歩く。
その横をあきらかに私よりずっと年配のかなりスローペースの
おばちゃんやおじさんが抜いて行く。
最初は寂しかったけど、ここまできて救いだったのは沿道の応援がないこと。
どんなに応援されても、いや、されればされるほどたぶん苦しかった。

残り2km付近。
スタート地点のある公園内へ。
草むらのまわりでは家族連れがバーベキューなどを楽しんでいる中を
ゴール地点まで「あと2km、あと2km、
松沢病院1周(よく練習していたコースで2km)」と呪文のようにつぶやき歩く。
そして残り1km付近でいきなりこみあげて・・・・・。

胃の中身がからっぽになりそれまで鉛をかかえていたような身体が
うそのように軽くなった。
時計を見ると4時間54分。
あと6分でゴールだ。
そこから猛然と走る、走る。

ゴール、4時間59分32秒。
達成感やうれしさよりも無事帰ってこれた安堵感しかなかった。

後になって思うと完全に水分の取り過ぎだった。
それほど暑くもないのに回りに流されてなんとなく給水し、
まだ食べ物も完全に消化されないまま水分が蓄積し、
エネルギーは走ることに費やされ、胃腸の動きまでいかず
機能停止状態だったのだと思う。
そして佐川カントク(今回は残念ながら参加できず)いわく、
アミノ系飲料は胃腸をやられる人もいるらしい。
「たられば」になってしまうけど、もし水分を取りすぎていなければ
4時間半を切れたのに、と悔やまれる。

というわけで終わった直後は、「マラソンは怖いな、もうやめよう」
と思っていたのだけど、
ちょっとまだそれはできないんだな。
なんたって笑顔でゴールしたい。
荷物番をしてもらったMさん撮影の私のゴール写真は悲壮感にあふれていた。
そして大会で撮ってくれていた40km付近での写真。
口は魚のようにあき、目はとじ、倒れる寸前、
今見ると吹き出しそうだけど、そりゃあもう辛さがにじみでている。

軽やかに颯爽と笑顔でゴール。
次回はこれで有終の美を飾りたい。
タイムはいっそ4時間を狙うかな。
(4時間半は見えたので)
by musasabi-sapana | 2010-06-11 00:20 | マラソン
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