むささび通信

2010年 11月 13日 ( 1 )

セゾン文化は何を夢をみた/永江朗

1980年代から90年代のバブル時代、
うわついていて誰もがなんだか豊かになったような錯覚に
陥っていた時代。
全然好きではなかったけど、あの頃よかったなぁと思うことのひとつ。
それは池袋西武9階から上のアール・ヴィヴァンがあったこと。
高校が美術系だったこと、家が西武沿線だったので
社会人になってもしょっちゅう通っていた。
ここは本屋、レコードショップ、詩の店などが集まっている売り場。
床は絨毯で、詩の店は真っ黒な内装だし、店内はキコキコギーギーいう
現代音楽がかかっていた。
いついってもすいていて、でも洋書を含めアート本も
おもしろいものがそろっていて
何時間いても飽きない場所。
そうそう、ここで何度かレコードのジャケ買いをして失敗をしたっけ・・・。
(それこそキコキコギーンの繰り返しみたいな)

そしてバブルははじけ、消費動向も変り、
西武も勢いを失い、そごうと合併し・・・となっていくのは周知のとおり。

本書は1980年代、アール・ヴィヴァンで働いていた著者が
25年以上を経てあの「セゾン文化」というのはなんだったのか、を
当時の西武百貨店文化事業部長、セゾン美術館館長、リブロの創設者、
そして堤清二にインタビューして総括しようというもの。

既存の書店での棚作りをリブロが変えたこと、
1975年西武美術館オープンの際、当時デパートでの
絵画の展覧会といえば印象派しかなかった時にあえて現代美術を
やろうとした試み、ブランド全盛の時に無印良品を作ったこと、
文化・芸術派の社員(外から来た人)とほとんど本など読んだことのない
流通系社員の温度差の違いの苦労話など、
当事者の言葉で語られておもしろい。

そういえばそのころはなんとも思っていなかったけど、
デパートの宣伝に糸井重里、田中一光、松永真などが
かかわっていたのだからかなり贅沢な話だ。
これらの仕掛けは「文化・芸術活動を通して民主主義を広めよう」という
堤清二の声がけのもとに始まったこととはいえ、
彼の独裁的手法というより、なにかおもしろいことをやってやろうという
遊び心、創意工夫に魅力を感じて様々なクリエイターや文化人
が自然と集まって(サロンのようなと書いてある)きたようなのだ。
西武に入社希望する新入社員のほとんどが「文化事業部」希望だったという
逸話もある。(友達にもいた)

それでも「文化とビジネスの両立」という矛盾をかかえたセゾンは
時代とともに失速する。
堤清二が文化・アートにつぎこみすぎて失敗したのではないことも
本書を読むとよくわかる。
セゾンは役目を終えたんだということが。

最後、筆者が堤清二にインタビューした際、10代〜20代にセゾン文化の影響を
受けた作家が活躍する今、感想を聞くと「マーケティング絵画ですよ」
と言ったのが言い得て妙。

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by musasabi-sapana | 2010-11-13 17:14 | 映画・本・美術



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